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ルーツ貿易創業50周年企画 インポーターの視点からふりかえる洋菓子50年 第2回 前編

2026/05/20 神奈川・鎌倉「パティスリーM I WA」三輪壽人男シェフ

厨房機器が菓子作りをレベルアップ


パティスリーM I WA・三輪壽人男シェフ

1980年代、日本の洋菓子を発展へと導いた一人が、鎌倉の名店「レ・ザンジュ」のシェフパティシエを務め、現在は「パティスリーMIWA」を営む三輪壽人男シェフです。
優れた厨房機器などの導入によって、菓子作りの環境が整い、仕事の精度が上がっていった当時の様子を、ルーツ貿易株式会社 白根康博会長との対談でお届けします。


三輪壽人男(みわ・すみお)プロフィール
1949年生まれ。「ジロー」「小川軒」「モントロー」のシェフを経て、1982年の鎌倉「レ・ザンジュ」オープンと同時にシェフパティシエに就任。卓越した素材選びと理論的な素材使い、自由な発想から生まれる独創的な菓子作りで人気を博す。2010年、「パティスリーMIWA」を開業。



洗浄機が起こした厨房革命

三輪:窯を買おうと訪ねて行ったのに洗浄機を買って帰った(笑)のが、ルーツさんとのお付き合いの最初でしょうか。

白根:ウィンターハルター社の食器洗浄機ですね。

三輪:1982年の「レ・ザンジュ」開業からほどない頃だったと思います。

白根:当時はまだパンフレットによるセールスが一般的でしたが、それでは商談に時間がかかる。シェフたちも判断に迷う。そこで僕は会社に現物を設置して、シェフたちが機能や使い心地を実体験できるようにしたんですね。おかげで購入を即断してもらえるようになりました。

三輪:レ・ザンジュでは、菓子厨房に導入した後、喫茶厨房にも入れて、計3台使っていました。

白根:パティスリーで洗浄機を使い始めた先駆けでしたね。

三輪:長身の私には洗い物のシンクが低くて、腰を痛めていたのが購入を決めた理由のひとつでした。菓子屋は長時間の立ち仕事ですから、機械に任せられる部分は任せようと。使い始めてみたら、洗浄機を使うべきメリットがたくさんあることに気付いたんです。

白根:なるほど。

三輪:まず、油脂分がきっちり落ちる。メレンゲを立てるにも生地を作るにも重要です。高温(85℃)のお湯で洗い流されるため、殺菌効果も高く、洗浄後の乾燥も早い。ボウル、ホイッパー、ヘラ、銅鍋など、次から次へと洗い物が止まるところを知らないのが菓子屋の厨房ですが、作る方に追われていると、どうしてもシンクにたまっていく。それがなくなりましたね。

白根:導入先からよく言われました、「以前は菓子を作り終えた後で洗い物をしていたけれど、洗浄機があると、作り終えた時には仕事が全部終わっている」と。

三輪:排水上のメリットも大きかった。パティスリーではバター、生クリーム、チョコレートなど、油脂分の高い素材を大量に使います。排水溝に油脂分が固まって、定期的にヘラでかき落とすなどの掃除が必要だったりする。それが85℃のお湯のおかげで油脂分が溶けた状態で流れていく。排水溝の掃除がラクになりました。

白根:そんな効果があったとは……知りませんでした。

三輪:道具がきれいで、環境が清潔でなければ、良い菓子は作れません。我々にとって、何より大事なことです。

白根:80年代、ウィンターハルター社の食器洗浄機や機器洗浄機は、レストラン、パティスリー、社食や学食、病院の食堂、工場など様々な業態での導入が相次ぎ、合弁会社ウィンターハルタージャパンを設立・運営していた時期もあります。料理人やパティシエにとって、洗い物を機械に任せて、調理に専念できるメリットは大きかったのでしょう。


欧州のパティシエが太鼓判を押したミキサー

三輪:ルーツさん取り扱いの機器ではレゴーも使っていました。

白根:首振りミキサーですね。

三輪:メレンゲの立ち方が他のミキサーとはまったく違う。実にきめ細かく立つんです。

白根:ホイッパーが首振りして空気を抱き込み、きめ細かく泡立てるビーティング(ホイップ)、ホイッパーが自転しながら攪拌し、余計な空気を含ませずにすり合わせるステアリング(乳化・すり混ぜ)、大きく2つの機能がありますが、人間の手の動きを再現しているのが特徴です。ホイッパーが生地をしっかり絡め取れるように角度と速度の調整ができて、ボウルの隅々まで巻き込みながら攪拌するので、ムラなく均一に混ざります。

三輪:強引な攪拌ではないから、生地が傷まないですね。タンパク質は空気に触れると固まる性質があるから、素早く立てる必要があり、そこを強引にやると固まったタンパク質が壊れて傷つくのですが、レゴーなら、卵黄が多い共立ての生地でも、気泡がきめ細やかで滑らかで安定した生地ができる。結果的に気泡が潰れにくくて歩留まりがいい。

白根:実は取引を始める前に、レゴーを使っているフランスやドイツのパティシエを訪ねて、使用感を聞いて回ったんです。すると、みな「良いものができる」と言う。確信を得て、輸入をスタートしたのが1989年のことでした。今も取引は続いています。それこそが、信頼に足る品質の証だと思っています。
パティスリーM I WA・菓子


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