ルーツ貿易創業50周年企画 インポーターの視点からふりかえる洋菓子50年 第4回 後編
2026/10/16
兵庫・甲陽園「ケーキハウス・ツマガリ」津曲 孝シェフ

津曲:当時のリューベッカCEOのドクター・ハーナーが来られた際、帰り際に「ちょっと食べてみていただけませんか?」と鞄からクーベルチュールを出された。舌にのせると、カカオの風味に男性的とも女性的とも言えない独特なニュアンスがあって、「あぁ、これをザッハトルテのようなお菓子に使ったら、個性が出ていいだろうなぁ」とすぐにイメージが湧いた。チョコレートも生きるし、お菓子の個性も際立つだろうなと。「使います」と即答しましたね。
白根:以来、リューベッカのクーベルチュールを愛用されて……。
津曲:リューベッカのダークチョコレートで作るガナッシュに、ヘーゼルナッツのマジパンを練り込んだココア生地を合わせて、濃厚なチョコレートケーキを作っています。ガナッシュはトリュフと同じ配合ですから、かなり贅沢。スイスのチューリッヒにある「シュプリングリ」というチョコレートの老舗で修業した時に学んだお菓子がベースです。最初にイメージした通りの出来栄えになりました。濃厚だけど、しつこくなくて軽やか。最高の素材はピュアだから、スッと消える。
白根:おっしゃる通りですね。
津曲:僕は素材に”ピュア“を求めているんだと思う。アーモンドとは何か? カカオとは何か? その純粋性を求めている。牛乳もそうですし、生クリームもそうです。
白根:牛乳の突き詰め方も並外れていますね。
津曲:牛から見なければ、本当の持ち味は見えてこないと思うからです。どんな環境で過ごしているのか、どんな餌で育てられているのか、それによって牛乳の味は違ってきます。僕は、自然の中で家族と暮らしながら自然な餌を食べて育った牛の乳を使いたい。あちこち探して、今は四国の山の中の牧場をはじめとする数カ所から取り寄せて、お菓子によって使い分けています。生クリームも最高品質であるのはもちろん、クーベルチュールとの相性やお菓子ごとの使い方を考えて選びますね。
白根:アーモンド畑を見にシチリアまで行くのと同じですね。
津曲:そうです、素材は背景から知る必要があります。ちなみに砂糖はアルゼンチン産のオーガニックシュガーです。アルゼンチンは、スペインやポルトガルからの移民によるサトウキビ栽培と砂糖の製造が、17世紀から行われてきた歴史ある国なんですね。
白根:製菓技術の本質ですね。
津曲:僕は、素材の自然な持ち味を消したくない。ショートケーキ「フレーズ・ア・ラ・レーヌ」の生クリームにはバニラもお酒も加えていません。生クリーム1リットルに対して砂糖が60グラム、それだけです。生クリームに含まれる乳脂肪の粒子を潰さずに、乳糖の甘みを引き出すイメージでホイップするんです。生クリームが元々持っている、自然な甘みを生かすんですね。
白根:イチゴの頭にジャムが冠状に添えられていますね。
津曲:僕は菓子屋だから、飾りのイチゴすらもお菓子にしたくて。とはいえ、ジャムがイチゴを覆い尽くしては元も子もない。互いに引き立て合うための冠なんです。このジャムもその時その時のイチゴに合わせて炊くんですよ。
白根:素材があっても、菓子職人さんがいなければ、私たちの口に入らないのですから、こちらこそ感謝です。

“ピュア”を追い求める菓子作り

「僕は素材に“ピュア”を求めている」と語る津曲孝シェフ。
自らの舌で“ピュア”を見極めて素材を選び、同時に素材のバックグラウンドを知ることで“ピュア”の根拠を確かめるというプロセスを大切にしています。
そして、そこには“ピュア”を損なわずにお菓子に仕立てる技があります。
津曲 孝(つまがり・たかし)プロフィール
1950年宮崎県生まれ。67年上京し、渋谷「ヒサモト洋菓子店」で修業。72年、エーデルワイスに入社。77年、会社から派遣されて、スイス・チューリッヒ「シュプリングリ」で研修。80年からはグループ会社のアンテノール代表取締役社長を務める。87年独立開業。11年「現代の名工」、15年黄綬褒章を受章。
素材の背景を知る
白根:リューベッカのクーベルチュールの採用は即決でしたね。津曲:当時のリューベッカCEOのドクター・ハーナーが来られた際、帰り際に「ちょっと食べてみていただけませんか?」と鞄からクーベルチュールを出された。舌にのせると、カカオの風味に男性的とも女性的とも言えない独特なニュアンスがあって、「あぁ、これをザッハトルテのようなお菓子に使ったら、個性が出ていいだろうなぁ」とすぐにイメージが湧いた。チョコレートも生きるし、お菓子の個性も際立つだろうなと。「使います」と即答しましたね。
白根:以来、リューベッカのクーベルチュールを愛用されて……。
津曲:リューベッカのダークチョコレートで作るガナッシュに、ヘーゼルナッツのマジパンを練り込んだココア生地を合わせて、濃厚なチョコレートケーキを作っています。ガナッシュはトリュフと同じ配合ですから、かなり贅沢。スイスのチューリッヒにある「シュプリングリ」というチョコレートの老舗で修業した時に学んだお菓子がベースです。最初にイメージした通りの出来栄えになりました。濃厚だけど、しつこくなくて軽やか。最高の素材はピュアだから、スッと消える。
白根:おっしゃる通りですね。
津曲:僕は素材に”ピュア“を求めているんだと思う。アーモンドとは何か? カカオとは何か? その純粋性を求めている。牛乳もそうですし、生クリームもそうです。
白根:牛乳の突き詰め方も並外れていますね。
津曲:牛から見なければ、本当の持ち味は見えてこないと思うからです。どんな環境で過ごしているのか、どんな餌で育てられているのか、それによって牛乳の味は違ってきます。僕は、自然の中で家族と暮らしながら自然な餌を食べて育った牛の乳を使いたい。あちこち探して、今は四国の山の中の牧場をはじめとする数カ所から取り寄せて、お菓子によって使い分けています。生クリームも最高品質であるのはもちろん、クーベルチュールとの相性やお菓子ごとの使い方を考えて選びますね。
白根:アーモンド畑を見にシチリアまで行くのと同じですね。
津曲:そうです、素材は背景から知る必要があります。ちなみに砂糖はアルゼンチン産のオーガニックシュガーです。アルゼンチンは、スペインやポルトガルからの移民によるサトウキビ栽培と砂糖の製造が、17世紀から行われてきた歴史ある国なんですね。
自然な持ち味を生かす
津曲:自然な環境で生み出された素材を使う以上、作る環境、楽しむ環境もなるべく自然に寄り添いたい。チョコレートは冬場限定の季節商品にしています。扱う上で無理のない気温の時期に作り、保存目的の材料や加工もしません。賞味期限は短いけれど、その分、こまめに作るんですね。チェリーボンボンには、数年お酒に漬け込んだチェリーとフォンダンを使うのですが、そもそもお菓子の技術というのは、自然の気候条件下でいかに素材を生かすかを探究する中から生まれてきたものでしょう。白根:製菓技術の本質ですね。
津曲:僕は、素材の自然な持ち味を消したくない。ショートケーキ「フレーズ・ア・ラ・レーヌ」の生クリームにはバニラもお酒も加えていません。生クリーム1リットルに対して砂糖が60グラム、それだけです。生クリームに含まれる乳脂肪の粒子を潰さずに、乳糖の甘みを引き出すイメージでホイップするんです。生クリームが元々持っている、自然な甘みを生かすんですね。
白根:イチゴの頭にジャムが冠状に添えられていますね。
津曲:僕は菓子屋だから、飾りのイチゴすらもお菓子にしたくて。とはいえ、ジャムがイチゴを覆い尽くしては元も子もない。互いに引き立て合うための冠なんです。このジャムもその時その時のイチゴに合わせて炊くんですよ。
素材がお菓子に生命を吹き込む
津曲:僕にとって、素材は生きもの。素材がお菓子に生命を吹き込んでくれるんです。生きた素材がなければ、僕らはお菓子を作れない。生産者やインポーターのみなさんに感謝ですよ。白根:素材があっても、菓子職人さんがいなければ、私たちの口に入らないのですから、こちらこそ感謝です。

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