ルーツ貿易創業50周年企画 インポーターの視点からふりかえる洋菓子50年 第3回 前編
2026/10/09
福岡「フランス菓子 16区」三嶋隆夫シェフ

三嶋:1991年、この自社ビルを建てた時でした。より良い菓子作りのためには、厨房の構造、内装、機器はどうあるべきかを徹底的に探究していたんですね。
白根:千葉県市川市の弊社まで来られて、レゴのミキサーを体験されて。
三嶋:一般的なプラネタリーミキサーとレゴの首振りミキサー、性能の違いが一目瞭然でした。両方に同条件で水と洗剤を入れて回すと、プラネタリーの方は泡の大小が混在するのに対して、レゴの気泡は均一できめが細かい。
白根:レゴのミキサーは、手で泡立てたりかき混ぜたりするのと同じ動きを実現した首振りによって、プラネタリーの弱点を克服しているんです。
三嶋:実際、うちの看板商品であるダックワーズの生地をレゴで立てたら、それまでとの差が歴然で。ご存じのように、ダックワーズはシンプルなお菓子です。生地の仕上がり次第で、食べた時の印象が決まってしまう。レゴを導入して、生地のクオリティは格段に向上しましたね。
白根:歩留まりも良くなったそうですね。
三嶋:メレンゲが骨格となる生地で、メレンゲの質が成否を決定します。卵白の温度、室温、砂糖を入れるタイミング、立てるスピード、立て加減などによって仕上がりの状態は変わる。デリケートで一筋縄ではいかないアパレイユなんです。立てた後の粉類との合わせ方も重要で、その工程にもメレンゲの質が関わってくる。レゴ導入前は、上手く焼けたと思って窯から出してみたら、沈んだり凹んだり、逆に膨らみ過ぎたり、不安定でした。それがレゴで立てると確実に焼き上がるようになった。気泡が強くて安定しているので、歩留まりもいい。ほとんどロスがない。講習会でダックワーズを実演する時には、「うちと同じようなダックワーズを作りたいなら、レゴを使わないとできませんよ」と言っています(笑)。
三嶋:最初は売れなかったんですよ。81年の開業時からの商品なのですが、当時、洋菓子店と言えば「ケーキ屋」と呼ばれたように、お客さんが求めるのは生のケーキ。焼き菓子を買うという感覚はありませんでした。店が用意する焼き菓子もクッキーやマドレーヌ、パウンドくらいで、お客さんはそれらに目をくれない。だから、毎日売れ残っていたんです。それを自分たちで翌日の朝食に食べていた。すると、アルバイトの女の子が「残ったダックワーズをお客さんに差し上げてはいけませんか?」と言い出して。では、やってみようと。それから次第に1個2個と買い求められるようになっていきました。「舌を噛みそうな名前のお菓子、ください」とか「ダークダックス、ください」(笑)とか、お客さんが増えていった。
白根:「ダックワーズ」という名前はムッシュがお考えになったんですよね?
三嶋:生地の名称Dacquoise から取っています。アントルメなどの底に使われる生地を最中から着想を得た小さなお菓子に仕立てたわけですが、本来の発音は「ダコワーズ」。僕にはダッコちゃん人形が連想されて仕方がなかった(笑)。そこで、「ダックワーズ」にしよう、その響きの方がフランス的だよな、と。売れ始めてからは伸び続けて、今、うちの売上の3割はダックワーズが占めています。
白根:贈答用のお菓子として、多くの洋菓子店で高い売上を上げていると思います。ムッシュがダックワーズを世に送り出したことは、日本の洋菓子界への大きな貢献と言えますね。
白根:カリフォルニア産7割、シチリア産3割の配合でお使いですね。
三嶋:3割で香りも味わいも豊かになります。素材の力がものを言うんですね。

ダックワーズが洋菓子の定番になるまで

ショートケーキが日本のケーキのアイコンとすれば、焼き菓子のシンボルはダックワーズでしょう。生みの親は、福岡市「フランス菓子 16区」の三嶋隆夫シェフ。そして、「16区」のダックワーズ作りを支えてきたのが、レゴ社のミキサーとアフロンティ社のシチリア産アーモンドです。ダックワーズ浸透の背景をルーツ貿易 白根康博会長との対談でお届けします。
三嶋隆夫(みしま・たかお)プロフィール
1944年生まれ。大学卒業後、帝国ホテルで菓子職人としての礎を築く。76~80年、スイスのルツェルン、南仏ニース、パリで修業。パリ16区「アクトゥール」では日本人初のシェフを務めた。80年帰国、81年「フランス菓子16区」をオープン。07年「現代の名工」に選ばれる。15年「黄綬褒章」受賞。
レゴで安定した生地作り
白根:ムッシュとのお付き合いは、レゴのミキサーからですね。三嶋:1991年、この自社ビルを建てた時でした。より良い菓子作りのためには、厨房の構造、内装、機器はどうあるべきかを徹底的に探究していたんですね。
白根:千葉県市川市の弊社まで来られて、レゴのミキサーを体験されて。
三嶋:一般的なプラネタリーミキサーとレゴの首振りミキサー、性能の違いが一目瞭然でした。両方に同条件で水と洗剤を入れて回すと、プラネタリーの方は泡の大小が混在するのに対して、レゴの気泡は均一できめが細かい。
白根:レゴのミキサーは、手で泡立てたりかき混ぜたりするのと同じ動きを実現した首振りによって、プラネタリーの弱点を克服しているんです。
三嶋:実際、うちの看板商品であるダックワーズの生地をレゴで立てたら、それまでとの差が歴然で。ご存じのように、ダックワーズはシンプルなお菓子です。生地の仕上がり次第で、食べた時の印象が決まってしまう。レゴを導入して、生地のクオリティは格段に向上しましたね。
白根:歩留まりも良くなったそうですね。
三嶋:メレンゲが骨格となる生地で、メレンゲの質が成否を決定します。卵白の温度、室温、砂糖を入れるタイミング、立てるスピード、立て加減などによって仕上がりの状態は変わる。デリケートで一筋縄ではいかないアパレイユなんです。立てた後の粉類との合わせ方も重要で、その工程にもメレンゲの質が関わってくる。レゴ導入前は、上手く焼けたと思って窯から出してみたら、沈んだり凹んだり、逆に膨らみ過ぎたり、不安定でした。それがレゴで立てると確実に焼き上がるようになった。気泡が強くて安定しているので、歩留まりもいい。ほとんどロスがない。講習会でダックワーズを実演する時には、「うちと同じようなダックワーズを作りたいなら、レゴを使わないとできませんよ」と言っています(笑)。
洋菓子界全体を潤す定番菓子
白根:いまやダックワーズを置かない洋菓子店がないほどに、全国に広まりました。三嶋:最初は売れなかったんですよ。81年の開業時からの商品なのですが、当時、洋菓子店と言えば「ケーキ屋」と呼ばれたように、お客さんが求めるのは生のケーキ。焼き菓子を買うという感覚はありませんでした。店が用意する焼き菓子もクッキーやマドレーヌ、パウンドくらいで、お客さんはそれらに目をくれない。だから、毎日売れ残っていたんです。それを自分たちで翌日の朝食に食べていた。すると、アルバイトの女の子が「残ったダックワーズをお客さんに差し上げてはいけませんか?」と言い出して。では、やってみようと。それから次第に1個2個と買い求められるようになっていきました。「舌を噛みそうな名前のお菓子、ください」とか「ダークダックス、ください」(笑)とか、お客さんが増えていった。
白根:「ダックワーズ」という名前はムッシュがお考えになったんですよね?
三嶋:生地の名称Dacquoise から取っています。アントルメなどの底に使われる生地を最中から着想を得た小さなお菓子に仕立てたわけですが、本来の発音は「ダコワーズ」。僕にはダッコちゃん人形が連想されて仕方がなかった(笑)。そこで、「ダックワーズ」にしよう、その響きの方がフランス的だよな、と。売れ始めてからは伸び続けて、今、うちの売上の3割はダックワーズが占めています。
白根:贈答用のお菓子として、多くの洋菓子店で高い売上を上げていると思います。ムッシュがダックワーズを世に送り出したことは、日本の洋菓子界への大きな貢献と言えますね。
味の立役者はシチリア産アーモンド
三嶋:見た目はゴツゴツ、口に入れると表面はサックリ、中はふんわり。このギャップが食べ手の心をとらえるのでしょうね。それと、ルーツさんが輸入しているアフロンティ社のシチリア産アーモンドが醸し出す風味。白根:カリフォルニア産7割、シチリア産3割の配合でお使いですね。
三嶋:3割で香りも味わいも豊かになります。素材の力がものを言うんですね。

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